JRA 馬術&引退競走馬

引退競走馬(日本)- NEW WAY –
壮大な夢を、街と共に、引退競走馬と共に。
オールド・フレンズ・ジャパン 原田喜市

原田 喜市 KIICHI HARADA

2018年リオデジャネイロオリンピック馬場馬術 日本代表
一般社団法人オールド・フレンズ・ジャパン代表理事

馬場馬術日本代表として、
リオデジャネイロオリンピックにも出場した原田喜市さんは、
2020年9月にオールド・フレンズ・ジャパンを設立。
地元・岡山県蒜山高原で、地域と一体となって、
引退競走馬の取り組みを進めています。

“競走馬”から、”共創馬”へ。

「馬場馬術は、馬を魅せる競技」と語る
原田さんならではの取り組みとは。
その先に思い描く壮大なビジョンとは。

蒜山高原は、馬のためにある土地。

岡山県真庭市、雄大な自然が広がる蒜山高原。原田さんが代表理事を務める一般社団法人オールド・フレンズ・ジャパンは、この地で引退競走馬の活動に取り組んでいます。

「蒜山という土地は、百年ほど前から馬がいたという歴史があるんです。明治時代には陸軍軍馬育成場が設置され、さらに時代が進むと地元の農家に払い下げられて農業に活用されたり、ある時期にはこの土地で競馬が行われていたりもしていたようですよ。

なぜ蒜山が馬と縁の深い土地になったのでしょうか。原田さんはこう考えています。

「本当に自然が豊かで、気候がよくて、美味しい水があって、美味しい草があって。それが全てだと思います。蒜山は馬が過ごしやすい環境が整っていて、馬のためにあるような場所だと思いますね。」

馬たちへの恩返し。 その想いが取り組みの原点。

オールド・フレンズ・ジャパンは、引退競走馬が健やかに過ごせる場所を提供しながら、馬たちが地域社会の中で“活きる道”をつくる活動を展開しています。その原点は、原田さんの馬への想いにあります。

「僕は馬がいたから成長できた。僕にとって、馬は人生のすべてです。たくさんお世話になった馬たちに少しでも恩返しをしたいと思って、引退競走馬の取り組みをはじめました。

馬たちの余生を豊かなものとするにはどうしたらいいか。そう考えていく中で、馬たちに社会的な役割を与え、馬自身がお金を生み出すような仕組みをつくれればと思ったんです。そんな想いを抱いていたところ、アメリカ・ケンタッキー州にある
『Old Friends,Inc.』のことを知って。調べてみるとMichael Blowenさんという方が創設者であること、一頭の引退競走馬からこの事業を始めたということ、そして年間3万人もの人が訪れる観光地になっていることが分かりました。これはと思って、すぐにコンタクトを取りましたね。」

そうして原田さんは、Michael Blowenさんに引退競走馬への想いを伝えました。

「GⅠレースなどで活躍した馬たちを蒜山に集めて、たくさんの方に見に来てもらう“魅せる事業”のことなど、私たちがやりたいことをきちっとお話して、『オールド・フレンズを日本でやりたいんです』って伝えました。そうしたらMichaelさんも喜んでくれて、『じゃあ一緒にやりましょう』と言っていただいて。こうしてオールド・フレンズ・ジャパンがスタートしたのです。」

馬自身が新しい生き方を 見つけられるようにサポートしたい。

競走馬として多くの人々に興奮と感動を与えてくれた引退競走馬を繋養する”名馬厩舎”。今後建設を進める馬を魅せるためのこの建物は、地域に馴染み、馬と人が笑顔でつながることができる場にしたいと原田さんは語ります。

「ファンの人たちが馬を見に来るのではなくて、馬に招待してもらって、その家に『こんにちは』って遊びに来るような場所にしたいと思っています。」

オールド・フレンズ・ジャパンの繋養第一号が、2015年の函館スプリントステークス(GIII)を制した「ティーハーフ」。2017年高松宮記念(GI)では16番人気で4着に入るなど、10歳まで長く現役で活躍した馬です。

「生産牧場からの申し送りには、『オンとオフがはっきりしていて、普段は落ち着いていますが、一旦その気になると派手に立ち上がったりヤンチャなこともします』と書かれていました。今まで一生懸命走ってきた馬なので、まずはこの環境に慣れてもらうことが第一です。そして、ゆっくりでもいいので、ティーハーフ自身が新しい生き方を見つけられるように、サポートしていきたいなと思っています。

それにファンのみなさんは、馬に対する熱い想いがさまざまあると思うので、そういった想いにしっかりと耳を傾けながら、一緒により良い場所を作り上げていきたいと思っています。」

蒜山をケンタッキーに。 馬と共に創り、共に生きていく場所に。

オールド・フレンズ・ジャパンは、名馬厩舎に代表される引退競走馬を“魅せる事業”と共に、もう一つの事業にも取り組んでいます。

「引退競走馬を活用して新しい人材を育成する事業です。地元の岡山理科大学専門学校に動物飼育トレーニング学科があり、僕もそこに関わらせてもらっているんです。いろいろな経験をしてきた引退競走馬たちから、学生が感覚的に教えてもらうことはとても多いんですよね。
学生たちには引退競走馬に教えてもらったという誇りを持って、社会に巣立っていってほしいです。引退競走馬にもしっかりと役割を持ってもらいながら、この蒜山で馬と人が循環していく環境を創っていけたらと思っています。」

馬と人と地域が一つになり、新しい社会を共創していく。その先に原田さんは大きなビジョンを思い描いています。

「蒜山には年間で200万人以上の観光客がいらっしゃいます。そういったみなさんにも、サラブレッドという存在をもっと見てほしい、もっと深く知ってほしい、もっとたくさん触れ合ってほしいんです。そのためにも、地域にしっかりと根付くような事業を考え実行していく必要があると思っています。そういった活動の一つひとつが、この蒜山の20年後、30年後、さらに100年後までつながっていきますからね。それぞれの馬たちにしっかりと役割を持たせて、地域のみなさんと馬が一つになって、共に新しい社会を創っていければと思っています。」

「今後、蒜山の他のエリアにも、馬たちがゆっくり草を食べながら過ごせる放牧地を増やしていこうと思っているんです。そういう場所をあちこちに点在させて、蒜山高原線をサラブレッドロードにしていきたいですね。」

馬が当たり前にいること、それが自然であること。
蒜山がそういう地域になったらいい。
原田さんはそう考えています。

「何年かかるかわかりませんが、
アメリカ・ケンタッキーのような馬と共に生きていく土地にできたら最高ですね。」