落ち着け。落ち着け。落ち着け。
華やかに、ゆったりとした足取りで後輩達を誘導する。
これが俺。This is me.

俺の名前はライトオンキュー。競走馬として生まれて、悪くはない成績を残してきた。
しかし、引退の時が来た。不思議とレースに出られなくなった事に後悔はなかった。
ただ、俺はあの場所が好きだった。

綺麗な芝生。整ったダート。たくさんのファンの声援。
またあの場所に戻りたかった。
そのチャンスが来た。
今度は後輩達をコース場まで導く誘導馬として。

レースに出ていた時とは全く違う練習が始まった。
地味に見えるかもしれないが、これが中々難しい。
競走馬時代はアドレナリン全開で誰よりも早くゴールへ、と教わってきた。
なかなかストレスの溜まる日々だった。

本番の日。
いよいよあの場所へ戻れる。
緊張感と期待感が高まる。
競走馬時代の時とは違い、責任感という新しい感覚に襲われる。
だんだんと見えてくるあの舞台。
戦闘体制に入っている後輩たちが、目の前を通り過ぎていく。
昔のように込み上げる興奮を必死に抑えながら後方から彼らを見守る。

よし、またあの舞台に戻ろう。
聞こえてくる歓声。
競馬場の光が目に飛び込んでくる。
広がる世界。

ここだ、ここが、俺は大好きなんだ。
暖かいファンの声。美しい緑の芝生。吹き抜ける優しい風。

レースへ出走することが無くなった今。新しい歩み方を俺はする。
大好きなこの場所で。